最近、国内外のベンチャー企業が研究開発を加速させているということで注目を集め始めた「核融合発電」。
でも、核融合ってなんや??難しそうやなぁ。🤔
って思われている方もいるのではないでしょうか?
そこで本記事では、学生時代に核融合関連の研究をしていた筆者が核融合発電について解説します。
そもそも、なんで「核融合発電」っていうのが注目されているの?
エネルギー問題
まずエネルギー問題から踏み込んでいきたいのですが、今現在のエネルギー源っていうと、火力とか、水力とか、原子力とか、再生可能エネルギー(太陽光,風力,地熱など)とかがありますよね。
ですが、それぞれが問題点を抱えているんです。
火力発電の場合だと:
- 二酸化炭素を排出するので、地球温暖化の要因になっている
- 大気汚染や酸性雨の原因となる硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)を排出する
- 化石燃料(石油、天然ガス、石炭)の埋蔵量が有限
- (日本の場合だと、輸入に頼っているので調達に関する懸念や、円安や原油高によって価格が高騰するということもありますね)
水力発電の場合だと:
- ダムの底に土砂が堆積してしまい、発電量が減少する
- ダム建設時に周辺地域の自然環境を破壊してしまう
原子力発電の場合だと:
- 制御不能になると、核分裂反応が暴走する可能性がある
- 高レベル放射性廃棄物(強い放射能。。。長い間、放射線を放出。。。)が出るし、処理方法も確立していない
- 燃料(ウラン、プルトニウム)の埋蔵量が有限
再生可能エネルギーの場合だと:
- エネルギー密度が低くて、発電能力不足
- 天候や時間などに発電量が左右されるので、出力不安定
- コストも高め
世界の国々の人口増加や経済が発展するに従って、より多くのエネルギーが必要になってくるんですがどうすれば・・・
(上記の欠点を補うため、それぞれをバランスよく組み合わせた「エネルギーミックス」という考え方があります。ですが、結局はそれらの欠点がなくなるわけではないので、問題としては残ったままなんですよね。)
新エネルギーに求められること
上述したエネルギー問題を解決するために、下記図の3E+Sを満たした何か新しいエネルギー源があればなーっていうところですが、そこで登場するのが「核融合発電」なんです!
核融合発電は3E+Sを満たしていて、「夢のエネルギー」とか「究極のエネルギー」って言われたりします。
核融合発電
核融合とは?
核融合の定義としては「軽い原子核同士が融合してより重い原子核に変換される反応」のことを言います。
が、難しそうなことは一旦置いておいて、かなりざっくりとしたイメージは、下記図の感じです。
実際の核融合発電では、燃料として重水素と三重水素(トリチウムとも言われます)の利用が想定されています。(実はそれ以外の物質を利用した核融合も考えられているのですが、難易度がかなり高く、まずは実用化に最も近いと言われている重水素-三重水素の反応を利用する方向で進んでいます。)
上の図で言うと、左側のボールが重水素(*1)、右側のボールが三重水素(*2)、ぶつけたらそれらがくっ付いて(=融合)ヘリウムができるといった反応が使われる見込みです。その核融合反応の中で大きなエネルギーが発生するのですが、それを発電に活用しようというのが核融合発電というわけです。
(*1): 1つの水素原子と1つの中性子がくっついたもの
(*2): 1つの水素原子と2つの中性子がくっ付いたもの
ちなみに、燃料は海水から取れるのですが、海水1リットルから石油2500リットル分のエネルギーが取り出せるんですよ〜。
今の原発とは何が違うの?
ここまでで核融合の話をしてきましたが、既にある原発との違いにも触れたいと思います。
ズバリ、違いは利用している反応です。
- 核融合発電では、核融合反応を利用します
- 現在の原発では、核分裂反応を利用しています
逆の反応を使っているというわけですね。
核融合反応では、そもそも“ぶつける”という作業をしないと反応は起こらないのですが、
核分裂反応では、1回の反応が次の反応を起こすというように連鎖的に反応が起こってしまうんです。
- 核分裂の連鎖反応は何もしなくても起こるので、それをうまく制御しながら利用しているのが原発です。その制御が失われると、暴走状態となってしまいます。なので、最悪のケースを避けるために何重もの対策が講じられています。
- 核融合では制御(ぶつける作業を)しないと反応が起こらないため、制御を失っても暴走せず(というか止まってしまう)安全性が高いと言われています。
また、核分裂では高レベル放射性廃棄物が出てしまうため、この廃棄物の取り扱いには注意する必要があります。核融合ではこのような高レベル放射性廃棄物は出てこないので、これもメリットの一つです。
核融合でも反応の中で中性子という放射線が出ますが、このエネルギーを使って発電するためほとんどが熱として使われてしまいます。残りの中性子はコンクリートで止められます(建物の外に出てこれない!)。三重水素も放射能を持っている(ベータ線を出す)のですが、空気中を5mm程度しか進むことができないほど弱い(紙1枚あれば遮蔽できます)です。また自然にも存在しています。
核融合の特徴
核融合発電の特徴は以下の通りです。
- 原理的に暴走しない高い安全性
- CO2やNOx、高レベル放射性廃棄物を生じないため、環境に優しい
- 燃料は海水に含まれる(三重水素はリチウムから生成)ため、燃料が無尽蔵に存在し、安定供給が可能
このように、核融合発電は現状のエネルギー問題を解決できる大きなメリットを持っているので、注目されているんですね!
さて、今回は核融合発電について解説しました。少しでも、読者のみなさまのご理解の一助になれば幸いです。
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